怪談語りがたり 都市ボーイズ早瀬康広 後編

シーンで活躍する怪談語りを深堀りするインタビュー企画「怪談語りがたり」。
今回は都市ボーイズ・早瀬康広さんインタビューの後編。
YouTubeチャンネル、呪物との関わりなどについて話を伺った。
(インタビュー・写真●怪談ガタリー編集部)

前編はこちら

早瀬康広 1988年3月14日生まれ 岡山県津山市出身

YouTubeチャンネル始動

——2019年、早瀬さんは「怪談グランプリ」で2度目の優勝を果たしました。

「2年ぶりに返り咲くことができたのですが、それでも状況は大きく変わらなかった。もうわからなくなっちゃったんです。『どう考えてもおかしいだろ!』って。自問自答を繰り返した末に、岸本さんが前から誘ってくれていたYouTubeをやることに決めたんです」

——そうして都市ボーイズのYouTubeチャンネルが生まれたと。

「岸本さんには『ポッドキャストと同じように、僕が編集もアップロードも全部やるから、岸本さんはウチに来て話をしてくれるだけでいいからね』って伝えて。それが2019年の11月頃だったと思います」

——コロナ禍の直前ですか。

「僕らのYouTubeチャンネルの登録者数が他より伸びているのは、スタートが少し早かったからだと思っています。当時、他にいなかったですしね。そういった意味では運がよかった。ラッキーパンチですね。やがてコロナ禍が来て、『おうち時間が増えても観るものがない』というときに、たくさんの人に観てもらえるようになりました。それで注目され、現在の登録者数につながったのだと思います」

——YouTubeチャンネルの開始も大きなターニングポイントになったわけですね。

「それで2021年にやっと借金を返し終えて、食えるようになったんです。2015年に活動をスタートしてから6年かかりました。たまに『憧れています』って言われることがあるのですが、僕のような生き方は絶対に勧めないですね」

呪物という家族

——次に呪物についてお話を伺いたいのですが、呪物を集めるきっかけは何だったのでしょうか?

「テレビ関係の仕事をしていた頃、裏方としてよく心霊スポットに行っていたんです。その時期に『心霊スポットの物を集める』みたいなことをやっていて。例えば、所有者がいない廃神社にある呪いの木の葉っぱをジップロックに入れて持ち帰る、とかですね。それをテレビ番組で取り上げてもらうこともあって。誰にも言わずに集めていた物に興味がある人もいるんだなって思いました」

——最初に手に入れた呪物は何ですか?

「2017年頃、ミャンマーのオールドバガンという街の宿に泊まって取材をしまくったことがあったんです。その帰り際、骨董品が売られているのを見かけたんですよ。眺めていると、店主から綺麗な細工の首飾りを渡されたんです。『これは俺の血筋に伝わる物なんだ』って。それはチン族の首飾りで、人に呪いにかけるための物だったんです。それを手にしたとき、『これを手に入れたら人生が変わるぞ』って思ったんですよ」

——それほど魅力的なものだったのですね。

「自分が今まで心霊スポットで集めていた物と違って、この呪物には店主が教えてくれた話があり、歴史もあり、『人を呪い殺した』という過去もある。すごく魅力的に感じたんですね。そのときすでに呪われていたのかもしれませんが、首飾りを手に入れたときの記憶があまりないんです。『どうにかしてこの首飾りを持ち帰りたい』、その一心でしたね。売ってくださいと頼むと『売り物じゃないんだ』と断られたのですが、真剣に交渉したら『大切にしてくれるならいいよ』って。譲ってれたんですよ。それを日本に持ち帰りました」

——それから呪物を本格的に集めるようになったと。

「そうです。偶然にも、オカルトコレクター・田中俊行さんと呪物を集め始めた時期が同じなんです。だから僕のチン族の首飾りは、田中さんにとってのチャーミーちゃんですね」

——呪物に対して、早瀬さんはとても深い愛情を注いでいる印章を持っています。

「集めるうちに、だんだん呪物がかわいそうに思えてきたんです。誰かを呪うために作られて、いいように使われて、「怖い」って言われて。呪物も愛が欲しいんじゃないかと。それを、愛が欲しかったけれどもらえなかった、一歩を踏み出せなかった過去の自分と照らし合わせたんですよ。呪物をかわいがることによって、かつての自分の頭を撫でてあげることができるんじゃないかって。だから、早瀬家に来た呪物は幸せにしてあげたいですね」

——呪物と旅行をしたりもしていますよね。

「そうなんです。ちょっとした旅でも大きなキャリーバッグに入れた呪物を入れて歩いて、ダブルベッドの部屋を借りて、ふかふかのベッドに呪物を寝かせてあげたり。窓際に置いた呪物に『ほらほら、高い景色やで。怖くないかい?』って話しかけたり、布団をかけて寝かしつけたりしています」

——家族のような存在なのですね。

「呪物は基本的に、元々あった場所の景色しか知らないんです。だから色んな景色を見せてあげたいと思っています。かわいくて仕方がない。大好きですね」

——今日も呪物と一緒なのですか?

「はい。覗くと死ぬ鏡、首狩り族の呪術本、聴くと降霊するかもしれないカセットテープが一緒です」

怪談との付き合い方

——普段から怪談はお聴きになるのですか?

「いや。僕は他の人の怪談をまったくと言っていいほど聴かないんですよ。YouTubeではホストが喧嘩する動画だったり、田舎のライブカメラばかり観ています(笑)」

——怪談語りについてはいかがでしょう?

「自分にとって語りは2番目で、怪談を収集しているときが1番楽しいですね。特に、撮影した画像データをフォルダ分けしているときが最高です。取材のときの思い出アルバムのページをめくる感じで」

——現在の怪談・オカルトシーンについて思うことはありますか?

「生意気なことを言うと、何かに憧れたら終わりだと思うんです。大切なことは『本当に好きだから続ける』であって、『誰かになりたいから続ける』ではないと思います。たくさんの方が怪談、オカルトで活動をしている現在のシーンを見ていると、そのあたりが少し不安ですね。一体どれくらいの人が、本当に好きで活動を続けているんだろうって。でも、続々と新しい人が出てきて、面白い話をしていますからね。色々と楽しんでいます」

——今までのお話を踏まえて伺いますが、早瀬さんの現在についてはどう思っていますか?

「確かに収入は増えましたが、他の面は変わっていない気がします。僕はずっと愛に飢えていた男だったので、奥さんと岸本さんが横にいるだけで、人生のゴールを迎えているんですよ。今はウイニングランみたいなもので……。目標も特にないですし、楽しくできたらそれがいい。健康が一番です」

ウェブ、メディア、リアルイベントなど様々な場で、都市ボーイズとして、個人として全国各地を駆け回る早瀬さんから今後も目が離せない。
早瀬さん、貴重なお話をありがとうございました。

「早瀬さんにとっての怪談とは?」

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