「杜下怪談会」で王道の怪談も“怪談師が4人も住む”深川エリアも楽しむ

2025年の「怪談初め」は何にしよう?
予定表を眺めていたら「杜下怪談会」が1月に開催されることに気付きました。
杜下怪談会といえば、毎回、満員御礼、約3時間みっちりと著名な怪談師さんの怪談話やトークが楽しめる、怪談イベントの「王道」的立ち位置という印象がありました。
これこそ2025年の一発目にふさわしいのでは!? とお伺いすることに決定。
また、怪談イベントは相変わらず初心者なのですが、「杜下怪談会」のゆかりの地「深川」にはかつて住んでいて思い入れも深い筆者は、今回その深川エリア在住の怪談師さん4人が登場するということで、この地域の面白いお話もきけるのではと楽しみにしていたところもあります。
「杜下怪談会」を通じて正統派の怪談会ってどういうものなの? というところと、地域密着型だからこその面白さをレポートしていきます。

実は誕生日がきっかけに始まった!? 2年続く杜下怪談会

まずは杜下怪談会ってどういう会? というところから。
イベント告知によると——

DJ UNIT 銀座線のホームタウンがオーガナイズする不定期レギュラー怪談イベント。
怪談作家、怪談師、怪談好きな方々をMIXして、怪談初心者から怪談ジャンキーまで”怖いを楽しめる怪談会”をお贈り致します。
ホームタウンでホームタウンによるホームタウンの怪談会……それが『杜下怪談会』です。

とあります。
実はこの怪談会、怪談ガタリー編集長でもあるホームタウンさんがご自身の誕生日周辺の週末に深川エリア(=森下=杜下)で初開催したことがきっかけで不定期に開催されるイベントで、既に9回目の開催。
場所はいつも森下で、ちょうどこの日で2周年だそうです。
誕生日も2周年もとってもめでたい。

というか、誕生日をきっかけに開催したのは冒頭の挨拶で初めて知りました!

招かれるのは今をときめく実力派の怪談師さんが中心という印象で、構成はそれぞれ順番に怪談を語り、フリートークをはさみ、再び怪談の三部構成——約3時間の長丁場というのも特徴の一つです。

9回目となる第九乃怪に出演する怪談師さんは住倉カオスさん、田中俊行さん、チビルマさん、そして主催のホームタウンの4人で、全員深川住みのご近所さんという、より地域色強そうなイベントになる予感です。

毎回深川の怪談師さんがいらっしゃるわけではないのですが、地域とのつながりは大切にしているイベントではあると思います。

たとえば深川エリアには年2回程度開催される「深川お化け縁日」という地域密着型のお化けの文化祭的なイベントがあるのですが、その開催日に合わせて実施されている時も多く、縁日とセットで楽しめそうなのも良いところ。

そしてこの杜下怪談会、私はお伺いするの2回目なのですが、初めて行ったときも会場は満席の熱気むんむん!
今回もチケットは早々に売り切れていて、とにかく人気が高いんです。

私が行った回ではないですが、前回開催時はテレビの取材も入ったそうですよ。

というわけでそんな大人気&大注目の杜下怪談会が一体どんな内容だったのか、早速紹介していきたいと思います。

初めて参加が半分近く!? 相変わらず超満員でスタート!

和室の会場には所せましと座布団が敷き詰められ、開場すると最後列までびっちりと参加者でうまっていきました。
見たところ、9割は女性。
もともと怪談イベントは女性の観覧者が多い印象がありますが、こんなに集まっているのは初めて見たかもしれません。

冒頭ホームタウンさんが「今回が杜下怪談会、初めての人いますか?」ときくと、半数近い人たちが手を挙げます
怪談イベント自体が初めてという方はいなかった(あるいはいても手を挙げてなかった。私なら挙げられないからその可能性もけっこう高そう)ので、怪談イベント界隈にはなじみのある人たちが多いようです。

リピーターだけではなく新しい方もどんどん参加することによって人気が維持されているということがわかります。
ホームタウンさんからは注意事項として以下のような説明がありました。

・飲み物はOKだけれど食べ物は怪談中はお控えください(10分休憩で食べるのは自由)
・写真撮影は今日の怪談師さんはSNS投稿も含めてOKだけれども怪談中の撮影はお控えください(フリートーク時はOK)

こういう事前説明は、非常にありがたく思っています。
少しでも感謝の気持ちが伝わればという想いで写真をSNSに投稿したら、実はやめてほしかったとか、言わないからすれ違いが起きるのはとても悲しいことです。
また、飲食もこの会としてのルールが明確になるほうが観客同士の余計なトラブルの発生を防げますし、長丁場で多少何か口に入れたいときに、このタイミングで食べられるんだとか、飲み物はいいんだとかわかるのは助かります。

会場の電気が消えて第一部の怪談パートへ

諸注意後にイベント紹介などを経て、ホームタウンさんが誕生日ついでに、本当の誕生日を過ごす予定の会場であった怖い話を語り、「あれ?これは第一部の前座?」と思っていたら、実はそれがホームタウンさんの怪談パートだったようで(もしかしたら時間の関係かもしれません)。

そこから会場の電気が消え、いよいよ怪談師さんが1人1人入場して怪談を語ります。

チビルマさんがトップバッター。
台湾で翻訳してもらいながらきいた、台湾の大学での怖い話をしていて、ゲームや映画でも話題の「女鬼橋」みたいな話でいいなとさっそく楽しませていただきます。
そして、深川エリアにちなんだ話をするわけではないんだなとその時までは思っていました

次に田中俊行さん。
いきなりご自身がどこに住んでいるかの詳細な説明に始まり、もう、思いっきり最初から最後まで深川エリアのお話
この地域に昔からあるマンションでの怪奇現象はちょっと笑える要素もあって常に楽しく怖い怪談語りでした。

そしてラストは住倉さん。
深川エリアに長く住んでいる住倉さんは昔付き合っていた人も門前仲町住み、地域のお祭りの神輿も3回くらいかついだということで生粋の深川っ子のようです。
怪談もやはり地元深川の話になり、さすが「杜下怪談会」という感じの地元密着型怪談をいくつもきくことができました

第二部は深川トークで盛り上がりすぎて、ソコジャナイところで一番の悲鳴

第二部は怪談師4名が出てきてフリートークのお時間です。
会場も一気にリラックスモードとなり、たくさんのカメラが向けられて冒頭は撮影タイムにもなっていました。

盛り上がったのはもっぱら深川の話!!

全然深川を知らない人がきいたらどんな気持ちになるのかは私にもわからないのですが、元深川住民としてはこれが本当に面白くて。

出てきた話題としてはたとえば
・銭湯のクネクネおじさんの正体はまさかの!?
・スキンヘッドが集まる忌み地説
・閻魔様が自分にだけ何も言ってくれなくて気まずい
・ハンバーグ定食が出てくるのが超早い理由
・あのオシャレカフェまでバウンドしていってほしい話

など。

特に田中俊行さんの生活動線上で出会う不思議な人達がまるでアニメのキャラクターのように、キャラが立ち、いきいきとしていて、笑いが絶えません。

そしてこの日一番の悲鳴があがったのはチビルマさんがご飯屋さんで過ごした時のエピソードでした。
「その悲鳴、怪談話した時にききたいやつだよね」
とツッコミが入っていました……確かに。

あまりに面白かったのと、怪談会を通じて地域を知るというのはとっても良い試みなのではと思ったので元深川住民として話題に出てきて場所のわかったものについてはマップにしてまとめてみました。
一言説明は当日参加した人向きですが、意外と会場から15分圏内くらいにだいたいあるので、怪談会前後にお散歩できそうです。

さんざん深川のことを話してトークも終盤……というところでホームタウンさんが「実は今日は巳年ということで蛇の怪談なんかも話したかったんですけど、これはこれでいいですかね」と話すと「え、そういうことなら……」と次々に蛇の怪談が飛び出すのですが、それもほとんど深川の話。
トークテーマ絞っても深川ネタ出てくるの、さすがすぎて驚きました。

第三部はなぜか相槌役が隣にいるスタイルで終了時間ギリギリまで大盛り上がり

さて会場が温まりすぎた後に第三部。
今回も幕開けはホームタウンさんが怪談を話し、そこから暗転して怪談師さんが1人ずつ登場……と思いきや、1人目にお話する怪談師である住倉カオスさんと一緒に田中俊行さんが入場

どういうこと? と思っていると、田中俊行さんが「今日話す予定の怪談、すごく好きなやつでして、ぜひ自分も近くでききたいと思ってついてきました」というようなことを話し、住倉カオスさんの隣に席を確保。

そんなことあるんだ(笑)。

最初は予想外の展開に笑ってしまいましたが、でもこの相槌役がいる怪談語り、トーク形式ではないので怪談の怖さ自体を阻害する感じにもならず、聞きどころで田中俊行さんがリアクションしてくださったりするのでとてもききとりやすかったです
もっとこの形式で怪談ききたい! と思っていたら、次のチビルマさんのターンでも田中俊行さんが隣に。
そしてそのまま田中俊行さんの怪談になってもチビルマさんが残って隣で話を聞くという展開になります。

住倉カオスさんとチビルマさんのお話はどちらも旅先の出来事で髪の毛がキーワードになっているという共通点があり、どちらも「え、そういう結末!?」という驚きもあってとても興味深くききました。

そして最後の田中俊行さんの怪談は、三重で食べた霊視ラーメンという前段の話に始まり、リアルタイムで自分の身に起きている怖い話を実況するかのように説明するのでつい前のめりになってきいてしまいました。

田中俊行さんも観客も夢中になっていたら、あっという間に時間がたち、予定していた終演時間を大幅に過ぎていました。
怪談自体もいいところで“to be continued”になり、今なお続きが気になりすぎています

なだれ込むように他怪談師さんが入場して最後のご挨拶。
時間がないので、フォトセッションをしながらの次回告知。
大慌てで会場を後にすることになりました。

余韻に浸りながら深川散歩。地域に根ざした怪談会ももっと増えたらいいな。

2025年の「怪談初め」にふさわしく、しっかり怪談もきくことができたうえに、地域密着型の怪談会の楽しさもあってとても良い時間を過ごすことができました。
3時間という長尺でも、良いタイミングで休憩が入るのでそれほど聴き疲れする感じもなく、初心者でも楽しめるのではと思います。

帰り道に話題に出てきた隅田川周辺を少し散歩し、話題にでてきた喫茶つかはらやiki Espressoを覗いていったのですが、存在しない新しい思い出が増えたような気分です。

初めて杜下怪談会へ行った時はそこまで深川トークで盛り上がるというわけではなかったので、これは毎回ではないと思いますが、その時も深川の怪談はいくつか出てきていたので、地名を冠する怪談会の場合は「場所にちなんで……」というお話は何かしらきけるのではと思います。
私は自分になじみのないエリアの旅行に行くときにその地域の怪談や不思議な話を調べてその地域の温度感を知ろうとすることがあるのですが、怪談会をきっかけにその地域を知り、そこから新しい体験が開かれていくのもとてもいいなと思います。

次回は5月3日にお化け縁日と同日開催とのことですので、お化け縁日を軸に少し深川散歩を楽しんでから怪談会に向かうのも粋なのではないでしょうか。

杜下怪談会 第十乃怪

改めて2025年も引き続き、初心者視点で怪談イベントの様子をお伝えしていければと思います。ここオススメという情報も教えていただけたらうれしいです。
そして、レポートを通じて「怪談イベントを見に行きたいけれど、私が行っていいものなのかな」と思う方のハードルを下げていければと思います。

Kana
2023年初めて怪談ライブに行き、本職での10年以上の広報経験から多くの人にその魅力を広めたくなってコラムを始める。
はじめての怪談レポートはこちら
雑談系Podcast「誤り続けるオンナたち」配信中。
「ぽんのうず」でホラーゲーム制作にも挑戦。

関連記事

TOP