第十服『ラブホ心霊写真の思い出in池袋』

『池袋怪談』発売!

またもしばらくぶりの更新となってしまいました『奇ッ怪ちゃばなし』!
既視感のありすぎる始まりですが——去る7月29日に自身初の怪談本『池袋怪談』が発売となりました!
なんと怪談界の生ける伝説・西浦和也さんと畏れ多くも共著させて頂きました。
さて、どうして『池袋怪談』を書くことになったのかといいますと、私、中高6年間池袋の学校に通い、そして今も池袋近郊に住んでおりまして、中々縁の深い街なのでございます。
というわけで今回は、そんな池袋の、本に載せられなかったエピソードをご紹介いたします。

西池袋のラブホテルで心霊写真を撮れてしまった思い出

今回本で書けなかったエピソードの筆頭がこれ。
なぜって、親が読むかもしれないからです——幾つになっても娘は娘。
一応ファンタジーは守らねばなりません。
というわけで数少ない池袋で起きた実体験にも関わらず、載せられなかったお話。

その日、大学生だった私は、当時付き合っていた彼氏くんと「ラブホ行ってみようぜ〜!」という社会見学的なノリで、とある西池袋のラブホテルに入りました。
そこは、当時はまだ珍しかったバリ風の内装のホテル。
海外旅行も未経験だった私は、そのオリエンタルな雰囲気にいたく感激しました。
なので帰り際、身支度をして部屋から退出しようかというタイミングで、
「ピンで記念写真撮って!!」
と彼に自分のガラケーを渡しました。
この可愛い内装を写真に留めておきたかったんですよね。
ベッドに腰掛けて、バリらしさを演出する天蓋式のしゃのカーテンを体の前に巻き付けるようにして、ピースサイン。
写真を撮った彼氏が「これでいい?」と確認してくれたので、2人で画面を笑顔で覗き込んで——固まってしまいました。
写真の中で楽しそうに笑う私の、体が写っていないのです。
しかも、その写りは奇妙なものでした。
いわゆる首だけになっている心霊写真みたいなものではなく、紗のカーテンが手前に被っている部分の体が消えて、奥のベッドと壁のみが写っている。
カーテンの外に出ている顔や肩、足などはしっかりと見えていて、まるで透明マントを被ったようでした。
紗の素材による光の屈折かと考えてもみましたが、それにしたって体だけが消えて背景は見えるというのは有り得ない現象です。
当時はホラー耐性0だった私は、瞬間小さく叫んで、即その画像を消去してしまいました。
一生の不覚です。
後年こんな仕事をするとは夢にも思っていなかったとはいえ、なんと勿体ないことを!
——と今は思いますが、まあそれが一般的な反応でしょう。
当時はホテルの曰くを確認する術もなくただ逃げ帰るしかありませんでした。

ですが、今の私には事故物件公示サイト「大島てる」があります。
今回本の執筆にあたり改めて「大島てる」を覗いてみましたら、まさにそのホテルに炎のマーク——すなわち事故物件を示すマークが付いていて驚きました。
炎をクリックすると「平成22年4月 絞殺」とだけの登録が。
その情報を頼りにインターネットで検索してみましたが、詳細は分かりませんでした。
ただ、普通なら「事件の後にホテルで奇妙な現象が起こる」というのが筋ですが、この記録が正しければ、事件は私がそのホテルを訪れた2、3年後の出来事になるのです。
事件の予兆のようなものだったのか、はたまた、インターネットの記録に残っていない曰くがさらに昔にあったのか——それは分かりません。
ですが、そういう単純な因果関係ではなく、なぜか怪現象や事件が続く場所というのはあるものです。

フシギなフシギな池袋

3歩歩けばそんな場所に行き当たるのが池袋という土地。
そういうと物騒に思えてしまうかもしれませんが、現れる怪異は実に多種多様で、戦慄や悲しみを覚えるものもあれば、どこか可笑しみの滲むものもある。
そんなお話を詰め込んでおります。
『池袋怪談』、ぜひご一読頂ければ幸いです。

はおまりこ
幼少の頃より妖怪や不思議なものが大好き。怪談最恐戦2023への挑戦をきっかけに怪談語りを始める。民俗学オカルトがテーマのZINE「怪異とあそぶマガジン『BeːinG』」も制作。普段は演劇やミュージカルの広告ビジュアル等を制作するグラフィックデザイン事務所をしながら、大型犬サモエドのソラン(♂)と暮らす。

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ひとりで怪談調査報告会(仮)
廃校うずめく
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