地元のお祭り気分で参加できる異空間『コンビニ怪談』で更ける夏の夜

夏は「怖い話」が似つかわしい季節。
地上波のテレビでも「ほんとにあった怖い話」をはじめいろいろな「怖い」をテーマにした番組が放送されているし、普段は大食い企画をしているようなYouTuberたちもこぞって怖い話を視聴者から募集して紹介したり、「お化け」「怪異」をテーマにした展覧会も複数開催されたりしています。
というわけで、普段は怪談をきく習慣はなくとも、ちょっと夏祭りに顔を出すような感じで参加できる怪談のイベント、ないかなーと怪談ガタリーを見ていたら、『納涼!コンビニ怪談2024(以降、コンビニ怪談)』の告知を見つけました。
これが「まさに! こういう怪談イベントに行きたかった!」と思うようなイベントでしたので今日はこちらをレポートします。

コンビニで怪談がきけるイベントってすごくないですか?

そもそも『コンビニ怪談』って何? という話なのですが。

コンビニにまつわる怪談を話す会ではありません。
一言で言うと、実際に営業しているコンビニで怪談を楽しめるイベントです。

実は『コンビニ怪談』と聞いた時、私は会場に心当たりがありました。
とあるコンビニでは、夜な夜なDJイベントで盛り上がっているという噂を耳にしたことがあったのです。
もしかしてそこなら怪談イベントもできちゃうんじゃないかと。

記事を読んでみると、やはり、そこでした。

レコードが買えるコンビニエンスストアとして注目を集めるレコードコンビニの夏の風物詩、「納涼!コンビニ怪談」が今年も8月17日(土)に開催される。
会場はコンビニエンスストアの店内、日常と非日常の狭間で怪談を聴くという唯一無二の体験は、毎年怪談ファンを虜にしている。
しかも今年のゲストは昨年の怪談最恐戦最恐位の深津さくら、レジデントの住倉カオス、ダースレイダーの怪談も貴重で必聴だ。

「納涼!コンビニ怪談2024」開催(怪談ガタリー)

コンビニで怪談をきくなんて、そのシチュエーションだけでとてもわくわくするし、怪談最恐戦最恐位の深津さくらさんの怪談も間近できけるということで、これはもう、行くしかない! となりました。

浴衣の子どもたちも一緒に! お菓子やお酒を買ってお祭り気分

開始時間にレコードコンビニに伺うと、一見、本当に普通のコンビニなのですが、入口には今日のイベントの立て看板が設置されています。

中に入ると店内には、ギリギリ言われればそうとわからなくもないお立ち台らしき場とマイクが設けられ、陳列棚の間を縫うように観覧席となる椅子が並べられています。

写真をご覧いただいてもわかるように本当にコンビニそのままなのです。

さらに、印象的だったのはコンビニとしての機能も継続していたこと。

怪談イベントだと、「あ、飲み物忘れた。買ってこよう」とか「軽くごはん買って先に食べておこうかな」など飲食関連のことが気にかかったりしますが、ここはコンビニ。

「ここに並んでいるもの買っていいんですか?」とためしにきいてみると、「買えますよ」とのこと。

おおー!めっちゃ便利じゃないですか。
コンビニでイベントするメリット、大きいかもしれません。

私は大好きなじゃがりこを買って特等席を確保の上、開始時間を待ちます。

この『コンビニ怪談』は、数年前から毎年開催されていて、夏の恒例行事になっているようでした。しばらく座っていると浴衣の子どもたちが複数人で来店し、お母様らしき方が「よろしくお願いします」と店主さんに一声かけて出ていきます。常連さん風の方も次々と訪れて、慣れた感じでさらりと缶ビールを購入し、ちびちびと飲み始めます。

これぞまさに夏の風物詩!!
といった趣です。

この感じで怪談イベントが開催されるなんて、とってもいい! ますます楽しみになりました。

前半はフリートークで連鎖する怪談

いよいよ始まる時間になると、コンビニの通常の照明が消えナイトモードに。
夜の学校じゃないですが、日常的な風景の“非日常感”はそれだけで不気味な印象を受け、テンションが上がります。

そこへ住倉カオスさん、ダースレイダーさん、深津さくらさんの3名が入場
人口密度高めのコンビニ店内でみなさんとっても距離が近い!

冒頭、住倉カオスさんが病から生還して間もなくこのイベントに出演されていたことを受け、病院&病気トークに花が咲きますが、深津さくらさんがすっと怪談を語り始めるところから一気に空気がひんやりとして、ライブ感が増していきます。

そこから移り変わる話題にあわせて怪談が次々飛び出すフリートークへ。

死線を彷徨う中での不思議な体験や怪異が日常の病院でのお仕事の話などが語られます。
深夜、無人のまま動くエレベーターや誰もいないベッドから鳴るナースコールが見過ごされていく話は、「確かに思い返してみたらあれはおかしかったけど、あの時はそれどころじゃなかったと思うようなことは、あるかもしれない」と共感しつつ拝聴しました。

コンビニなのにマイク設備が整っているだけで変な話ですが、イベントを定期的に開催していることもあって、メインで話す人が変わるたびに、店主さんがマイク音声を細やかに調整されていて、とても聞きやすく集中して楽しめました。

後半は1人1人順番に怖い話……からの本当の怪奇現象

休憩タイムをはさんでの後半戦は怪談師さんが順番に登壇して、じっくり怪談を話してもらう時間に。

気付けば浴衣を着た子どもたちはおうちに帰ったようで、怪談の内容もなかなかハードになっていきます。
お三方とも三者三様に魅力的な、興味深い怪談で、夏の夜のムーディーなコンビニにもぴったりでした。

住倉カオスさんの富士の樹海への精通具合にはびっくりでしたし、ダースレイダーさんの奇妙なお話が全部体験談なのもぞっとします
深津さくらさんのいくつもの怪談をたたみかけるように話していく怪談メドレーも次々怖くて圧倒されました。

自身が怖い体験、不思議な体験をしたことはほとんどない、という深津さくらさん。
そんな中でも数少ない事例としてラストに話したのは、「ある人からきいた怖い体験を別の誰かに話すと毎度必ず怪奇現象が起きる」というお話でした。

「関西でイベントをするときはノックする音がきこえたり、必ず何か起こるんですけど、さすがにここは東京なので何もなさそうですね」

ふふふと微笑みつつも少し残念そうな様子の深津さくらさんのところへ、住倉カオスさん、ダースレイダーさんが再登場し、エンディングトークに入っていきます。

と、そこに突然、固定電話のコール音が鳴り響き、店内がざわつきます。

店主さんが少し恐縮しつつ、さっと電話に出る中、
「なんですか? こんなタイミングでかかってきちゃうと気になりますね」
と3人は盛り上がっていました。

すると、
「あの……電話から何も声がしません。きいてみてください」
と不穏なことを店主さんが言います。
「えーーー」
怪談師さんたちが、かわるがわるきいてみても何もきこえなかったようです。
まさか、こんな不思議な現象に立ち会うことになるとは。

「東京は遠いから、さすがに電話で済ませたんですかね」
「いやータイミング完璧ですね!うれしいです」
深津さくらさんからは今日一番の笑顔がこぼれていました。

夏の夜。そうだ、怪談でもききにいこう。

このコラムは、怪談イベントにほとんど行ったことがない方に向けて、同じく初心者視点の筆者がテーマを決めてライブレポとしてまとめているものです。

今回はちょっと怖いものに浸りたくなる夏だからこそ、街の風物詩的に楽しめる怪談イベントとして『コンビニ怪談』をご紹介しました。
普段怪談をきかない人にも怪談を楽しんでもらう場として、夏の夜の地元のコンビニ(でなくとも慣れ親しんだ地域のイベントスポット)ほど最適な場所はないのではと感じました。
こういう場が増えていくと怪談イベントにふらっと行く人も増えそうです。

また、怪談ガタリーの告知を見なかったら出会えなかったイベントだったので、みなさまもぜひこれから開催される情報を怪談ガタリーでチェックしてみることをオススメします。

今後も引き続き、知らない人にとっては謎に包まれた怪談イベントの様子をお伝えし、「怪談イベントを見に行きたいけれど、私が行っていいものなのかな」と思う方のハードルを下げていければと思います。

Kana
2023年初めて怪談ライブに行き、本職での10年以上の広報経験から多くの人にその魅力を広めたくなってコラムを始める。
はじめての怪談レポートはこちら
雑談系Podcast「誤り続けるオンナたち」配信中。
「ぽんのうず」でホラーゲーム制作にも挑戦。

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