中毒症状を引き起こす『奇絶怪絶 最終回』(福岡怪談イベントレポート)

怪談ガタリー読者の皆さま、あらためまして、はじめまして、イソノナツカです。
さあ、鹿児島に住む怪談ジャンキーの私が行ってきましたよ!
『奇絶怪絶 最終回』
今回で四度目となった怪談イベント『奇絶怪絶』。
福岡の怪談収集家オオタケさん「本当に大好きな人だけを集めた」というコンセプトのもと開催されています。
また、毎回サブコンセプトも考えられており、そこに【最終回】の意味が含まれていたのです……。

イベントコンセプト

漫画家の凸ノ高秀さんと怪談師・怪談作家の夜馬裕さんがゲストの第一回目は「怪談活動を始めるキッカケとなった人」がサブテーマでした。
スリラーナイト所属の怪談師・村上ロックさんと、2023年怪談最恐戦優勝者である怪談師・深津さくらさんがゲストの回では「怪談活動を始めて目標にしたいと思った人」
怪談語り及び怪談イベント表管理人の雅さんと、臨床心理士・公認心理師であり怪談収集家の佐伯つばささんがゲストとなった第三回目は「みんなにこの方々の怪談を聞かせたい!」という思い。

そして最終回となった第四回目。
怪談収集家、怪談作家でありVRの世界でも怪談を繰り広げられている煙鳥さんと、怪談を語って書いて山に入って狩猟もなさるという若本衣織さん
今回はこのお二方をゲストとする中で、オオタケさんが「怪談の最終目標はこの人のようになりたい!」というサブコンセプトで行われたのです。

『奇絶怪絶』は「この2人を呼べるような怪談イベントにしていくのが目標」として開催を進めてこられ、今回その目標に達するベストタイミングとなったため【最終回】を迎えたのでした。
ただあくまでも、奇絶怪絶のイベントとしての目標。
オオタケさんご自身はこれからも怪談を続け楽しまれていくのでご安心ください。

あの人もこの人もいる!?

さて、会場はお馴染み福岡市中央区の大名にあるLive House 秘密-Himitsu-
開演30分前頃に着いたところ、すでに会場は人が多い!
事前にSNS上で会場チケット完売とのお知らせもありました。
音楽ライブ以外でこれだけライブハウスが熱気に包まれるって、そうそう無いと思うので嬉しいです。

どこに座ろうかとぐるっと見まわしていると、なんだか見た事ある帽子でメガネの方が……。

雅さんだーーーー!

お話を伺ったところ、東京から5、6名程で遠征に来られたとのこと。
「最終回でもあるし、オオタケさんのイベントだからですね」と話してくださった雅さん。
オオタケさん個人のファンという方はもちろん、オオタケさんが開催するイベントのファンって方もたくさんいるんだろうなと感じます。
他にも同じく福岡の怪談師、恐不知の毛利嵩志さんや九州内外のあちこちから怪談活動をされている方が集まっていました。
それだけ、マニアックで怪談ジャンキーなオオタケさん(褒めてます!)の魅力があるということですね。

どよめきが起こる開幕

関東程に怪談イベントが頻繁に行なわれているわけではない九州。
それでもこの日70席が埋まり、開演前には其処此処で雑談が盛り上がる程に、お客さま同士も怪談仲間として関係性ができている様子が多く見られました。
それはやっぱり、オオタケさんが毎月コンスタントに行なわれている『秘密の怪談BAR』の影響が大きいはず。
きっと、石ころもまだ多くてスコップも刺さらない荒野のようだったこの九州の土地……それを【怪談】というニッチなコンテンツが盛り上がるようふわふわな土壌に耕されたオオタケさんの努力。
そんな日々の歩みも楽しみながら、面白がりながらここまで来られたんだろうな……。

そんな事を考えながらいただく【奇絶怪絶オリジナルカクテル】
さらっとした甘さと開演前の緊張感にパンチを与えるジンジャー感。
バーカウンターに座って開演前の様子を眺めていましたが、ほとんどの方がファーストドリンクにこのカクテルを頼んでいました。

そうこうしていると開演のアナウンスが。
ステージの幕が開くと共に流れる音楽そしてどよめく会場
SEで始まる事があまりないからというのもあると思いますが、流れている音楽が軽快なホラーゲーム音楽っぽくて何とも言えないくすぐったさを感じるのです。
初っ端からラスボスが出てきたような雰囲気
これは煙鳥さんと若本さんというゲストだから、その光景に納得せざるを得ないようなしっくり感があったんだと思います。
そのまま唐突に始まる怪談……ここでも会場はざわつきました。

有無を言わさぬ【狂人パート】

ゲスト&オオタケさんが横並びで「ぬっ」と現れSEが鳴ったかと思えば、オオタケさんがさっとはけて煙鳥さんが怪談を語り出す。

情報量多っ!!!!
でもここがクセになる!!!!

自己紹介も何もなく唐突に厭な話を語る煙鳥さん。
秘密の【血塗られたステージ】とも言えるような真っ赤な背景に合う話だな、なんて思いつつ聞いていたら煙鳥さんが語り終わるやいなやすぐに怪談を語り出す若本さん!
「ああ、そう来るんですね!」と言わんばかりの畳みかけられる山怪談。
若本さんらしさ溢れる王道なお話でした。

そこから続く計5.3話
いやー、第一部の幕引きが面白過ぎて爆笑でした。
時間制による強制終了
こんな大胆な演出ができちゃうのもオオタケさんの魅力です。
今考えると、この強制終了に怯えながらゲストのお二人は怪談を語ってたんだな……と。
客席から観ていて印象的だったのが、怪談が語り終わったところで「ぐぬぬ……」と言わんばかりの表情や仕草をお二人がされていたこと。
きっとその話に対してコメントしたい事などもあったのでしょう。
それも全部封じられた中で矢継ぎ早に繰り広げられる怪談。
まさに【怪談合戦】といった雰囲気でした。
他では出せない緊迫感が最高です。

自己紹介もない考察感想もない、ただただ怪談を語り続ける第一部。
まさに【怪談に狂った二人】だからできたことでしょう。

空気が緩んだ第二部

怪談を連発した第一部が終わり、15分の休憩。
お客さまは強制終了のインパクトに気持ちが切り替わらず、ふわふわしている様子でした(笑)。
それと同時に「ここからはどうなるんだろう? 私たちをどうしてくれるんだろう?」という期待にも満ちている会場。
いつも時間があっという間に過ぎていく『奇絶怪絶』。
何か奇抜な演出をされているというわけではなく、その時のゲストに合った一番楽しめる進行なんだろうなと感じます。
私たち観客を楽しませてくれるのはもちろんのこと、オオタケさん自身が楽しんでいる
だから本っっっ当に楽しくて面白いんですよね

そして始まる第二部。
こちらも冒頭と同じピコピコBGMから幕開けです。
まずはそれぞれの自己紹介から始まり、オオタケさんから【最終回】の理由も話されました。
ゲストお二人はよっぽど第一部で緊張感があったのか、緩んだ空気感で怪談が語られていきます。

ここで披露された若本さんの海外怪談がもう、聞いたことない話で興味深く……ファンタジー映画を見せられているような感覚にもなるのですが、それが遠くかけ離れた話ではなく「私たちの身近にもあるんじゃないか? いるんじゃないか?」と思わされる……。
また煙鳥さんは、なかなか濃いめの厭な話が続きました。
若本さんがファンタジー映画とするならば、煙鳥さんはこわい絵本を読み聞かされているといった感じ
絵本だからと油断してはいけません。
子どもの頃に読んだ何か気味悪いこわい絵本って一生もののトラウマになるんですよ。
頭から離れない、いつもお風呂で思い出しちゃうような……。

もうね、濃密!!!
「濃いめ増し増し全部乗せラーメンみたい!」と直後の感想をツイートした私。
だけどどちらかというと、これはうどん。
福岡のソウルフード【牧のうどん】ですよ。
ストレートでシンプルなんだけど、だからこそ密度が高くて、沼。
食べても食べても減らない牧のうどんのよう。
と、こんなよく分からない感想が出てくる程に、私の心の中は刺激と快感で満ち満ちていました

口外厳禁!のクローズドパート

オオタケさんのPOPで奇妙な怪談も聞けて既にホクホクな第二部が終了。
「クローズドパートは口がカラッカラになるから飲み物がないとキツイですよ!」という注意報もありバーカウンターにはドリンクを頼む方が多数。

「だいやめソーダ割でお願いします」と焼酎を頼む方がいて、「これだけ美味しい怪談だとそうなるよね〜」と私もニヤニヤ。
するとそのお客さまが「ここのドリンク濃いのよ」と他の方に話される。
それに応えるようにドリンクを作ってるお兄さんが「これはもっと濃いですよ〜」なんてやりとり。
私も以前Xで呟いた気がしますが、秘密でワイン頼むと結構量多く注いでくれるんですよ。
すきです、秘密。

そんなわけでフロアもさらに温まったところで始まる、会場限定のクローズドパート。
ハッキリ言います……なんにも言えないぐらいくそやっべー!!!!!
煙鳥さんが「くそやべー」とポロっと言っちゃうほど、本当にやばくて最高。

今回のゲストお二人は、作家でもあり語り手でもあります。
だから、というわけではないかもしれませんがやはり【取材力】が凄まじい
ただ怪談好きなだけの私がこんな事を言うのも差し出がましいのですが、怪談の奥深さが桁違いなんです。
だから怖さに切れ味があり知識欲を駆り立てられる面白さがある。
話を語る時はごくごくナチュラルで「こんな話を聞いたんですよ……」と隣で聞かせてくれるような身近ささえ感じる。
オオタケさんが「こうなりたい!」というのも分かります。

怪談の輪はもっともっと広がる

オオタケさんの怪談イベントは「波紋のようだ」と常々感じます。

イベントを打ってそこで終わらない、留まらない。
その場を中心に幾重にも輪が広がっていく。
その輪がまた別の怪談イベントに繋がるし、新たな怪談好きを生むキッカケにもなります。
そして、怪談を愛する人々の居場所になる。
静かだった水面にエネルギーを伝える様子が、多くの人の心を掴んでいる理由です。

奇絶怪絶は最終回となりましたが、きっとここからまた面白くて怖い怪談会を見せてくれるんだろうと期待しか生まれない日となりました。
これからもオオタケさんから目が離せません!

……と、当初はここでレポート執筆を終了していました。

怪談ガタリーへ初めての掲載となったため、ちょっとカッコつけて綺麗に纏め過ぎたレポートになっちゃいました。
一時完了としていたところまでを、主催者のオオタケさんへ不備がないか確認してもらったところ、言ってもらったんですよ。

「イソノさんにとっての『奇絶怪絶』ってどんなイベントだったのかを読みたかった」

あああ、やっちまったなあと気づかされました。
カッコつけて綺麗に纏めてしまったところ全部見透かされてるなあと。
でもこれって、きちんと読んでもらわないと分からないことだと思うんです。
加えて、これまでの私のnoteで書いてきたイベントレポートと真摯に向き合ってくださった証拠です。
オオタケさんのこういうところが主催イベントにも語る怪談にも現れています。
自分に妥協しない全力で掴みに行くという気持ち

これに応えないわけにはいきません。
ここからは、追加で私個人の感想を綴らせていただきます。

私はいいなと思ったもの、好きだなと思ったことにそのまま純度100%の気持ちを書きだすことが得意です。
でも、私が100%だと思っている熱は他の人にとっては500%ぐらいウザい事があります。
そんなウザい熱量でお馴染みの私の本来の文章がここから発揮されますので、苦手な方はこちらでそっと戻られると丁度よいかと思います。

わたしにとっての『奇絶怪絶』

オオタケさんに出会ったのが2023年の『秘密の怪談ナイト』というイベントで、その後開催された第二回『奇絶怪絶』から計三回の参加となります。
真っ向から来てくださったオオタケさんへ伝えます。
率直に言って「『奇絶怪絶』は羨ましい程悔しい程に面白くて価値があると感じるイベント」でした。
これは参加した三回全てに言えます。
私も怪談が好きで怪談イベントが好きだからこその、羨ましさと悔しさです。
カッコ悪いし恥ずかしい気持ちですが真っすぐにそれを曝け出させていただきます。

オオタケさんは一目見ただけで分かる、人間としても創り上げるイベントにもばちばちのセンスが光っていて怖さと面白さの信頼が持てるんです。
だからこの九州でも怪談イベントが大盛況で成り立っていくんだと思います。
だけどそれは才能とか運だけではなく、ひっそり汗を流して努力しているような泥臭さも含まれています。

これは全て【怪談愛】があってこそではないでしょうか。
細々と活動を行なう私でさえ、怪談を好きなように楽しむという難しさを感じています。
そんな泣き言はねじ伏せられるような情熱と愛
そして目の前で証明される「動けば叶う」という積極性と実行力。
「福岡で怪談イベントをやっていない! だったら自分でやればいい!」という言葉では簡単なようでもとても難題な目標をやってのけているんです。
それを目の当たりにするたびに「私も頑張んなきゃ」と奮い立たせられます。

その指標となるイベントが最終回を迎えるなんて、寂しいとしか言えません。
でも私自身、僅かながら演者としても活動しているため分かるんです。
「続けるためには変化や進化が必要」だということが。
オオタケさん自身が全く同じ考えというわけではないと思いますが、怪談以外の活動者でも何かが変わるというのは避けられないと感じています。
それは生活であったり考えであったり、目標やゴール……人間ですもの、色んなことがあるんです。
と分かっているからこそ、あまりメソメソな言葉は書きたくないなという気持ちもありました。
それに、何かが終わる時って新しいことが始まる合図じゃないですか。
このイベントを見つめ続けてきたからこそ、これだけで終わるわけがないとも分かるんです。

だからですよ。私だってここで終われない。
最終回だからといって、この炎が鎮火されることなんてありません。
ああ、私が好きだなあと思う方々はいつも心に薪をくべてくれるんですよ。

「本当によかった」とシンプルに思えるイベントって心を動かされます
たまに「動かされてたまるもんかーーーー!」と抗いたくなる程の時もあります。
それぐらいグラグラ揺さぶってくるのが『奇絶怪絶』であり、オオタケさんなんです。

こういう事を書くとガタリー編集部さんが困るかもしませんが……。
この記事がアップされる時にアーカイブ配信期間内であれば、ぜひ私のような心の炎を一緒に燃やしてほしいです。
この熱量を感じてほしい!
だって最終回なんですから、これを逃すと『奇絶怪絶』を一生体感できないんですよ!?
で、もしこの記事のアップが配信期間終了後であれば、見逃した方には大変残念ですねの気持ちです。
それぐらい満足度高く、全力でオススメできる怪談イベントです。

同じ九州でここまでやっている方がいるから怪談がさらに盛り上がり、私も楽しむことができています。
本当にありがとうございます。
これ書きながら感極まって涙滲みそうな程には気持ちが昂っています!!!!
それぐらい揺さぶられてハートに火がついた大事な大事なイベントとなりました!!!!

どうぞ最後までお読みいただいた物好きなあなた、ありがとう!
(「あんたは誰や」/ミドリが脳内再生されながらのイベントレポとなりました)

イソノナツカ
鹿児島県在住、福岡県出身。職業、ライター/子育て支援員。一児の母という境遇や職業に特化した怪談を多数持っており、コンプレックスでもあった「怪談の内側に存在した者」として切り開く話は独特な形となっている。東へ西へ怪談ライブに足を運び、怪談イベントレポートをnoteでも発信。多くの方に怪談を楽しんでもらい文化として広げていきたいという思いから、楽曲としても怪談を進化させ地道にライブ活動などを行なっている。

リンク
オオタケ主催怪談イベント『奇絶怪絶』最終回(ツイキャス配信)

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