「恐点 〜怪談大忌利〜」だけは絶対観た方がいい

ホームタウン主催恐点怪談大忌利

みなさん、春です。
「恐点 ~怪談大忌利~(以降「恐点」)」です。
つい先日、2024年の恐点の頂点(Top of Kyoten)が決まったばかりのように感じますが、「恐点」は年4回開催されるので、早くも2025年の戦いの幕が開けました。
しかも、今回の「恐点 ~怪談大忌利~ 春の陣 2025」は全員が女性怪談師さん!!
12月にレポートを書いたばかりですが、その時からこの2025年最初の恐点をレポートするのだと決めて心待ちにしていました。
「恐点」は、司会者が出す様々なお題に合わせて怪談師が実話怪談を披露する怪談イベント
「1分怪談」や、「モノボケ」ならぬ「モノ怖」をはじめとする、見たことないような趣向を凝らしたコンテンツが盛り沢山で、いわゆる通常の怪談イベントとは一線を画します。
2025年から始まる新企画もあるということで、今年ならではの見どころも含めてまとめつつ、「恐点だけは絶対観た方がいい」と言われる理由をまとめたいと思います。

改めて、「恐点」とはどんなイベント?

「恐点」は春・夏・秋と開催され、4回目の冬に過去3回それぞれの1位、2位となった2名、計6名の強者たちが集い、恐点の頂点=Top of Kyotenを決するという1年がかりの怪談イベントです。

≪参加者≫
今回の恐点は「春の陣」という副題がつき、昨年の春の陣同様に女性怪談師6名がテーマカラーを決めて参加します。

  • オオタケさん
  • はおまりこさん
  • 深津さくらさん
  • 沫さん
  • 松永瑞香さん
  • 若本衣織さん

主催兼司会進行はガタリー編集長のホームタウンさん、アシスタントは怪談師の奈古和子さんが務めます。
ちなみに昨年の優勝者(Top of Kyoten)は深津さくらさんで、準優勝は若本衣織さん
つまり春の陣は実質、頂上決戦の再演といっても過言ではなく、さらに新たな挑戦者として選出された沫さんは、怪談ガタリーが開催した「怪談甲子園」の優勝者です。

≪内容・形式≫
「怪談師さんが怪談を話す」という前提部分は変わりませんが、紹介文にも「時節柄のお題や、小道具を使った“モノ怖”等、新しい怪談の楽しみ方を探求します」とあり、他のイベントとは違う斬新な枠組みで内容が構成されています。
(つまりあの、某お笑いご長寿人気番組へのリスペクトが込められた内容となっています)

≪勝敗の決め方≫
順位はどう決めるのかというと、お題にぴったりのよき怪談を話した方には、座布団の代わりに「心霊スポットで拾ってきた千羽鶴をバラしたもの」を1羽ずつ配布するシステム
イベントの最後にはオーディエンスも1人1羽ずつ投票でき、この鶴の獲得数で順位が決定します。
来場者が清き一票をもって参加できるシステム、とってもいいですよね。

「恐点だけは絶対観たほうがいい」と繰り返される熱いルール説明からいよいよ開幕

開幕早々の挨拶でホームタウンさんがこのイベントのルールを説明します。

  • その1 恐点だけは絶対観たほうがいい
  • その2 恐点だけは絶対観たほうがいい
  • その3 メンバーはお題に纏わる怪談を語る
  • その4 メンバーはお題や小道具を必ず使う
  • その5 メンバーはテーマカラーの装いを心がける
  • その6 いい怪談には心霊スポットで拾ってきた折り鶴をお渡しする
  • その7 来場者も誰が一番良かったか投票する
  • その8 上位2名は冬の陣に出演する

「恐点だけは絶対観たほうがいい」というのが2回出てくるのは間違いではありません
大事なことだから2回説明されているということです
親切!
主催のホームタウンさんのこのイベントに懸ける想いが伝わってきます。

尚、「このイベントが初めての人は?」という問いかけに3~4割くらいの方が手を挙げ、「恐点だけは絶対見たほうがいい」の声は、事前からしっかり届いていることもわかります。
事前説明が終わると、いよいよ順番に怪談師のみなさまが入場。

「入場後、気の利いた一言をお願いします」という無茶ぶりに対して、「昨年は会場票ゼロ票だったのがトラウマです」と語るはおまりこさん、「前回はホームタウンさんに1票はく奪されたのが忘れられません」と語る松永さんなど、前回出演時の悔しい思い出を語る一幕も(笑)。
もちろん会場を沸かせるための気の利いたコメントとして笑顔で話されているのですが、そのくらい怪談師の方々もこのイベントの鶴の行方を気にかけ、「しっかり勝ちに来ている!」ということが伝わってきます。

さて、ここからは実際に出されたお題と特に印象に残ったシーンを中心にご紹介します。
新しい企画が何なのかも注目です。

「今日は何の日?」からの『電車や駅に纏わる怪談』

1つ目は「今日は何の日?」にちなんだ怪談。
開催日の3月23日が丸の内線が全線開通した日ということで、電車や駅に纏わる怪談を話すというお題。

怪談師さん「●●な駅(電車)があったんですよ」
ホームタウンさん「へー、どんな駅(電車)なんだい?」
という件から怪談を始めます

テーマが絞られた上に、この振りに答える形で「なるほど」と思わせるストーリーを展開するのはなかなか難しそうです。

今回の恐点でいち早く挙手をして、全体を通じてトップバッターだったオオタケさん
某駅で起きた不思議な出来事は、「現代の幽霊ってそんななんだ」と最初から興味深い内容でした。

その後もひとひねりある、「え、何それ!?」とぞっとするような不思議なお話が続き、最初のお題からとても盛り上がりました。
個人的には沫さんの、特定の人だけが目にしてしまう怪異に纏わる都市伝説のようなお話が、新生活シーズンの季節柄にもぴったりで印象に残りました。

新企画「フリップ怪談」使い方が既に上級者すぎて驚きの連続

2つ目のお題はお待ちかね、2025年の新企画「フリップ怪談」
結論からいうと、これが、すごくよかったです!!
怪談師さんの新たなポテンシャルが引き出されるような神企画でした。

まず、全員に手持ちサイズのホワイトボードとマジックが配られます。
そしてルール説明。
どんな形でもいいのでこのホワイトボードに描いたものを怪談語りの中でうまく使うのがルールということで、それはいくら何でも難しそう……と思ったのですが、完全に杞憂でした。

「それでは誰からいきますか?」
と声をかけると、今回もオオタケさんが1番に手を挙げます。
「絵を描く時間あったかな?」というくらいの素早さに誰もが驚いていましたが、その理由はホワイトボードの中央に一本線を引いただけだったからでした。
それは一体何を意味していたのか!?
というのは怪談のクライマックスで明らかになり、鮮やかなフリップ使いに「おおおお」と感嘆の声が会場中に広がりました。
お話が面白かったのはもちろんなのですが、お題出されてすぐにこの使い方を思いつく着想力、すごいです。

その後もFAX用紙に見立てる松永瑞香さんのお話や、途中と最後の2回フリップを使って(書き換えて)、「気付かなかったけど本当だ!」とうなる若本衣織さんの山のお話など、「その発想はなかった!」と思うものばかりでした。

オオタケさん、はおまりこさん、深津さくらさんはこのフリップ怪談に2回チャレンジしていてどちらもよかったのですが、特に深津さくらさんが2回目に出したとあるおじいさんの絵は上手すぎて、夢に出てきそうな不気味さでずっと忘れられません。

何よりこの無茶ぶり企画に、怪談師のみなさまが全力で臨みつつも、終始笑顔で楽しそうな様子が印象的でした。

恒例となった「1分怪談」「モノ怖」にも名場面がもりだくさん

「1分怪談」は、舞台上手側から2周する形で1人2話、1分で終わる怪談を披露するというもので、おそらく唯一練習の成果を発揮できる企画です。
はからずも一番上手のオオタケさんが今回もトップバッターです。

みている側からすると、既に膨大にすばらしい怪談が語られて、脳内がぐるぐるしている時に、この1分怪談はちょうどいいんですよね。
怪談師さんの背後にタイマーが表示され、1分ギリギリになればなるほど、スリル満点でドキドキ楽しめます。

今回、はおまりこさん残り2秒、深津さくらさん残り1秒と55-60秒のギリギリを攻める方が多くいらっしゃり、その都度大変盛り上がりました。
そしてなんと、一人も制限時間オーバーすることなくきっちり1分以内に語りきりました。
さすがプロの方々です。

いつも滑舌よく流暢な語り口が魅力的な若本衣織さんが、この1分怪談になると早口が加速して、それでも噛まずにしっかり怖いのに圧倒されます。

松永瑞香さんが1分で語りきったと思ったら、もう1分でその続きを語るという連作短編集のような構成で怪談を話していたのは面白かったのですが、ホームタウンさんの厳しい評価により、1回目は完結しているとはいえないから減点ということになっていたのは無念でした。

休憩を挟んだらいよいよラストは「モノボケ」ならぬ「モノ怖」のお時間です。
「モノ怖」とは小道具を用いて怪談を話すというものです。

テーブルにずらっと並ぶ小道具たち。
ここまでの全企画が盛り上がりすぎて、まだここからもうひと盛り上がりあるのかと思うと、本当に恐点はすごい。

そしてこの回もトップバッターはオオタケさん。
全企画トップバッター達成!!

今回の「モノ怖」はとにかくみんな持っていく「モノ」の量が多めというのが印象的。

両手に抱えきれないほどのモノを持っていこうとするはおまりこさんには、「バイキングでもそうでしたね」というホームタウンさんからのツッコミも入ってましたが、村の風習にまつわる超怖い話で、なぜたくさんモノが必要だったのかがわかって衝撃を受けました。

松永瑞香さんからの再びのオオタケさんが登場し、「脳内トランス南無阿弥陀仏」「盛り塩MAX清めボディ」というパワーワードをぶっこみつつ、同じ人の身に起きた二つの出来事が語られる名場面も。
怖いけど大爆笑でした。

沫さんの河童の怪異譚は、ほのぼのしつつもこんなこと自分の身に起きたらトラウマだなと思うお話でよかったです。

そしてオオトリは深津さくらさん。
お父様の身に起きた不幸な事件にまつわる不思議な話だったのですが……モノ使いが神がかっていました。
「テーブルに置いてあるものを見て話す怪談を変えました」と後におっしゃっていましたが、赤い布を効果的に使うシーンは鳥肌が立ちました。
これにはホームタウンさんも感動し、鶴3羽が進呈されていました。

そんなこんなで大充実の「恐点」。
3時間以上にわたる長丁場だったにもかかわらず一瞬にも感じるほどの体感であっという間に全企画が終了。
いよいよ、投票タイムです。

そしていよいよ投票タイム。1位に輝いたのは……この方!

怪談師さんが一時退場し、「投票タイム」に入ります。
オーディエンスが前に出て一羽ずつ鶴を手に取り、自身の感覚でこの人こそ恐点の頂点(Top of Kyoten)という方に投票します。

投票に参加できるのはうれしいのですが、本当に、本当に、なんという悩ましい時間。

結果はどうなったかといいますと……

3位 深津さくらさん
2位 若本衣織さん
そして、1位となったのはオオタケさん!!!!

コメントする前に泣き崩れるオオタケさん。
少し落ち着きつつ、「前回3位で本当に悔しかった。今回は優勝できてうれしい」と話し、会場は感動ムードに包まれます。

ホームタウンさんは「これまでの恐点で、手数の多い人はムードメーカー的な立ち位置で勝ち辛かった。そんな中で優勝はすごい」とコメントを残します。

ここまでレポートを書いていて改めて思いますが、オオタケさんは、手数が多いどころか、全部の企画でトップバッターを務め、2回以上チャレンジできる企画は全部2回名乗り出て、すべての怪談がしっかり濃い内容で、まるで怪談師ロボットか何かのような活躍をされていました。
この健闘ぶりは他の怪談師さんに投票した方も含めて拍手を送りたいものだったのではないでしょうか。

そして、投票された鶴の数は僅差で、本当に順位がつけがたくそれぞれの心にそれぞれのTop of Kyotenがいるイベントになっていたのではないかと思います。

夏の陣も「絶対観たほうがいい」恐点になることでしょう

以上、怖さも面白さもぎゅぎゅっとつまった恐点の春の陣レポートでした。
「絶対観た方が良い」理由、伝わりましたでしょうか。
伝えたいことがありすぎて、いつもより長くなってしまいました。

恐点はいわゆる「怪談イベント」の枠を超越した独自のイベントなので、他では感じられない魅力が詰まっています。
そのうえで、怪談師さんそれぞれの怪談語りの持ち味や新たな魅力も感じられて、今後イベントでその方々の怪談をおききするのが楽しみになります。
特に今回の女性怪談師縛りでの戦いは新鮮で、華やかながら超実力派ぞろいの対決に夢中になれました。

次回夏の陣は6月21日(土)開催が決定してます

恐点 ~怪談大忌利~ 夏の陣 2025

ギリギリだと満席になってしまう可能性もあるので、ぜひ早めに予約しておくのがいいと思います。
今後も引き続き、初心者視点で怪談イベントの様子をお伝えし、「怪談イベントを見に行きたいけれど、私が行っていいものなのかな」と思う方のハードルを下げていければと思います。

Kana
2023年初めて怪談ライブに行き、本職での10年以上の広報経験から多くの人にその魅力を広めたくなってコラムを始める。
はじめての怪談レポートはこちら
雑談系Podcast「誤り続けるオンナたち」配信中。
「ぽんのうず」でホラーゲーム制作にも挑戦。

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