ファン・ファン・ファン・アウトのファン(3) 2025.05.31 わたしの全身は夢から得た不快な緊張から生まれたぬめぬめとした汗と、行為中ににゃんころみーこが吹き出した愛液にまみれていた。元来わたしがワキガであることも手伝い、ナンプラーを何滴か身体に垂らされたような臭気が部屋内を満たしていた。ラブホテルの薄暗い照明が、わたしの肌にまとわりつく湿気を一層
ファン・ファン・ファン・アウトのファン(2) 2025.04.30 わたしは、どういうつもりか妙にしなやかに身体をよじらせたり、かと思えば思い出したように首をぐりぐり動かして会場の様子を眺めたりするにゃんころみーこを無視して、目の前のテーブルに並べていた自著を手早く片付けた。来場者のほとんどがわたしの号令に素直に従ってくれているようで、会計の列が少なくな
ファン・ファン・ファン・アウトのファン(1) 2025.03.31 わたしがハンドルネーム〈にゃんころみーこ〉と初めて会ったのは、「NG無し」が売りの人気怪談師・助麻呂と二人で開催した怪談イベント『しょんべん早飲み怪談会』の本編終了後に設けられたサイン会でのことだった。 わたしはにゃんころみーこの名をかねて知っていた。というのも、複数の怪談師から「あの女
厭系怪談師キリト 2025.02.28 木製の丸テーブルを挟んで、その若者はわたしと対峙して座っていた。「先生……怪談ってものはねえ、あんたみたいにぬるい、お涙頂戴の話じゃあないんすよお」 彼は自分の名を「キリト」と名乗っていた。それが本名なのか芸名なのかはわからないが、自らを怪談師と呼んでいるからには、両方の線があり得る。「やっぱね
ねずみのお医者さん 2025.01.31 なぜ自分が現在「怪談作家」として活動できているのかを省みてみたところ、ひとえに己がとんでもなく堕落しきった愚か者であることに起因しているのだろうと思い至った。修練、修行に該当する行為が嫌いで、若いころはミュージシャンになりたいという夢はあったものの、まったく努力しなかった。作家デビューのきっかけ