「呪物書店」チビル松村 特別インタビュー

秋葉原の書泉ブックタワーにて8月7日から始まったオカルトコレクター田中俊行氏の呪物コレクション展「呪物書店」(主催:株式会社書泉)。
今回この展示に大きく関わっている怪談ユニットおばけ座のチビル松村さんにお話を伺った。
書店の最上階に突如現れた圧巻の呪物展示……その秘密に迫る。
(インタビュー・写真●怪談ガタリー編集部)

チビル松村 1993年5月1日生まれ 石川県金沢市出身

呪物書店が出来るまで

——今回、何故おばけ座が関わることになったのでしょうか?

「田中さんちに何かの用事で行った時、今度呪物の展示を本屋さんでやるからデザインとかちょっと手伝ってって言われて。で、設計とか展示とかの人は多分居るんやろうなと思って。何か手伝えることあるかな? キャプション作る手伝いとかは出来るかな? って打ち合わせについて行ったら、流れで全部やることになって」

——えっ(笑)

「いつの間にか主要メンバーのLINEグループに僕も入ってて(笑)。そこでもう、やるかと腹括って。展示設営からポスターデザインまで全て関わりました」

——企画当初からチビルさんは入ってたんですね。

「書泉さんはイラストレーターさんの展示とか結構イベントやられていて当初そんな感じの展示案だったのですが、せっかく関わるんだったら他の展示会には無い、別の価値みたいなものを付加したいなって思って」

——そこからどんなアプローチを?

「色々考えて、田中さんのお部屋をそのまま此処に持って来るのが良いなと思って、呪物が置いてある棚をもうここに持って来ちゃいましょうって言ったんです」

——有名な「呪物部屋」を部屋ごと展示してしまおうと。

「皆、それめっちゃ良いですねってなったんですけど、田中さんが棚は無理だって言われて。ただ(今回展示で使っている)鉄の棚は多分新しく発注出来るって言うので、それマジですか? 全然期間短かいけど本当に行けるんですか? って聞いたら、行ける行けるって言ってて……でも田中さんずっと発注してなくて、結局2週間前ぐらいになっちゃったんですよ」

——田中さんらしい(笑)

「田中さんはギリギリまで大丈夫って感じで……だけど、棚15基本当に納品されたんです、なんならちょっと早めに着いて。高さも揃ってて全然グラグラしてない、めちゃくちゃ凄いクオリティーで。しかも送料勿体ないって、神戸から車で持って来てくれたんです。鉄工場の人ヤバいですよ。今回の展示、影の立役者は鉄工場の人です(笑)」

チビルさんが描いた展示イメージ

——そこからどの様に展示を?

「僕がラフで描いた設計書みたいのがあって、それを元に建築家でもあるおばけ座のワダさんと、ワダさんのお知り合いのシマダさんって方が手伝ってくれて。田中さんの部屋を再現するために必要だったのは、古い木の床板とか壁板とかで、そういうの何かありませんか? って聞いたら、ちょうどいいのがあるって持って来てくれたのが、孤独死された京都の骨董コレクターさんの家の床板で」

——すごいですね。

「他にも、ワダさんが以前稲刈りを手伝った時に報酬で貰った丸太とか、夜逃げした家を解体した時に出た畳とか、使っている資材にも実はめっちゃストーリーがあるんです」

——細部の拘りが醸し出している雰囲気と、呪物の個性的な陳列も圧巻でした。そして、見どころの一つでもある田中さんの部屋の完全再現ですが、どんなところに気を使われましたか?

「細かいディテールは特に気を使いました。飲みかけのペットボトルや斜めになった大仏、ごみ袋もそのまま持って来ました。あと田中さんちに行くと、ウエットティッシュやボディシートがいたる所に置いてあるんです。それも忠実に再現しました。ただ余りにも忠実に再現したことでお客様……特に田中さんの事を知らない方には、これバックヤード見えてるんじゃない? って思われないかなってなって(笑)」

——確かに(笑)

「(部屋の再現を説明する)キャプションは必要だよねってなって、深津さくらさんに書いて貰おうって電話したら、書けますよって仰ってくれて。夜11時頃に連絡したんですが、深夜3時には出来てましたね」

——仕事が速い。

「おばけ座ディレクターのノゾミさんがポスターデザイン含むグラフィックデザインを全部作ってくれて、ワダさんが空間デザイン、キャプションは深津さんがやって、僕が全体のディレクション……伊勢海若くんはすべての関連投稿にいいねを押してくれてます(笑)」

——引き寄せられるように5人が揃ったんですね。

「初めて裏方として、メンバー各自本来のスペックが活用できたなって」

田中俊行と出会うまで

——チビルさんは田中さんといつ頃お知り合いに?

「怪談やってたら田中俊行さんって絶対知ってるじゃないですか。存在も噂も色々聞くじゃないですか。僕も活動当初そんな感じで知っていて1年ほど経った頃、怪談最恐戦の予選現場で初めてご挨拶して。そこで互いに共通の知り合いとか居るのがわかって。その日の帰りにTWILLO(トワイロゥ)って幻の屋台バーに一緒に行ったんです。で、連絡先を交換して」

——田中さんがまだ神戸にお住まいだった頃ですね。

「そうですね。で、田中さん東京のお仕事がちょっとずつ増えてきて、サテライトオフィス的な感じで家賃3万ぐらいの家を都内で探してくれへんか? って言われて。え?! ってなって」

——都内で3万円の家ってなかなかですね。

「で、仕方なくSUUMOで家賃3万円で調べてみたんですよ。そこからリスト10軒くらい出した、それぞれの良さとかも一応ポイントつけて。そしたら僕の家の近所の物件が、ちょうど住倉カオスさんと仲の良い不動産屋さんが紹介できるかもしれないってことで、3人で不動産屋さんに行ったんですけど、ご職業なんですか? って聞かれて、田中さんが職業欄に『オカルトコレクター』って書こうとして(笑)」

——職業だったのか(笑)

「『オカルトコ』くらいで住倉さんがパって止めて。不動産屋さんがオカルトコ? ってなってるので、住倉さんすかさずこの人作家なんでって。あ、作家さんですかって(笑)。 内見させて貰ったらすげえ良いじゃんってことで、じゃあ俺ここに住むって……当時の僕の家から徒歩6分くらいのところに引っ越してきました」

——そこからご近所付き合いが始まったんですね。

「で、結構仲良くなって。忘れ物したかもしれんから部屋見てきてくれとか、鍵空いてるから先入っといてとか、あと僕はリモートで仕事してたんで、昼飯とか夕飯とか行きませんかって、なんとなく会う頻度も多くなって。近所の河原散歩したり、缶コーヒー奢ってもらったり、2人で喋ったりだけとか。その時に僕は写真を撮ってて、田中さんの写真をX(エックス)に上げてインプレッションを稼ぐって活動をしてました(笑)」

——そのお写真良く見た気がします(笑)

「その流れで『トシが行く』の撮影を手伝ったりとかしてたんですが、遠野に座敷わらし人形の(魂の)入れ替えをしに行くんだけど、その模様をずっと撮影をしてほしいって誘われて、2人で遠野旅行行ったんですよ。それでめちゃくちゃ距離が縮まりましたね」

——その後2人のイベント(2022/8/13(土)MANHOLE企画怪談会「怪。特別編〜トシとチビル〜」)なんかもありましたね。

「そこら辺からですね、田中さんのファンの方々が僕に会った時に近づいてきて……チビル松村さんですよね? どうも田中ファンです。って挨拶して下さるようになって。えっ、これなんなんだろうと思ってずっと謎だったんですよ。えっ、もしかして煽られてる? みたいに思ってたんですけどね。そっからちょっとずつその方々とコミュニケーションとる中で分かってきたのは、どうやら田中ファンの方々の中で、チビル松村は最も田中俊行に近づいた田中ファンって事になってるらしくて。田中ファンの中の田中ファン、キング・オブ・田中ファンって思われてて(笑)」

——田中ファンの頂点に(笑)

「田中さんのファンって沢山いらっしゃるじゃないですか。田中さんの怪談が好きな人も勿論沢山いらっしゃるんですけど、みんな田中さんの存在が好きで、やっぱりその人間性、人として凄く好きな人が多くて。その中でも一目置かれてるのが、僕です(笑)」

愛と呪いの展示

——チビルさんにとって、田中さんはどんな存在でしょうか?

「疲れてそうやな、じゃあ飯行こうか? みたいに普段から気にかけてくれたり、すごく良くして下さって、やっぱり兄貴的な存在だったりしますね。印象的だったのは、僕の周りの会社の人とか、昔から仲良かった人とかが、田中さんと仲良くなってから性格とかオーラがまろやかになったって言われて。僕自身が割と意識高いトゲトゲ人間でちょっと気難しい感じだったんですけど、田中さんと一緒に過ごす時間に比例して凄く穏やかな人間になった様です」

——仏みたいな人ですね。

「田中さんって差別しないし、どんな立場の人にも平等に接するし、周りにすごい優しくて、誰かに何か求めたりとかもしない。でもそれだけじゃない、もっと本質的な何か、超自然的なものが彼の中にあるんじゃないかなと思って。そこが多分周りの人に影響を与えてて。それがスター性なのかなって気がします」

——仏そのものですね。

「実は田中さんと一緒に仕事してる人たちも結構田中ファンなんですよね。番組やイベントにキャスティングしてる人たちも田中さんの事が好きで……うん、確かにそう考えたらその中で最も近づいた男かもしれないですね(笑)」

——それは間違いないですね。

「今回呪物書店の田中さんの部屋の再現も、僕があの部屋にめちゃくちゃ行ってるので、本当に秒で、これとこれとこれとって必要なものが分かって。置いてある本のセレクトとか細部のディテールも、田中さんの部屋に見せるために必要のものは手にとるようにイメージ出来ました。あれだけ忠実に再現出来たのも、今に至る田中さんとの関係性があったからと思います」

——チビルさんが今回の「呪物書店」に図らずして関わることになったのも、もはや必然のような気がしますね。

「そうかもしれませんね。しかもその流れで“おばけ座”メンバーがみんな関わってるっていうのも、みんな田中さん好きなんで。今回の展示は“おばけ座”の田中さんへの愛で出来上がってる……愛と呪いの展示ですね(笑)」

各呪物のキャプションは田中さんが7月中に書いて印刷する予定だったが展示前日までに間に合わず、チビルさんのアイディアで書泉ブックタワーにて本を購入した際に付けてくれるカバー紙をくしゃくしゃに丸めてカットし、コーヒーに漬けて干したものに田中さんが手書きで書いていくそうだ。
会期中にすべての呪物にキャプションが付いて行く過程も楽しめそうだ。

「呪物書店」

【開催期間/日時】
2024年8月7日(水)~8月18日(日)
【開催場所】
書泉ブックタワー(秋葉原) 9Fイベントスペース
【イベント内容】
■呪物書店(展示会):2024年8月7日(水)~8月18日(日)
・入場券 1,500円(税込)※ 呪物ステッカー付
・日時、時間指定のチケットを販売いたします
【月~木】
①12:00-14:00 ②14:00-17:00 ③17:00-20:00
※最終回の最終入場時間は19:30となります。
【金土日祝】
①12:00-14:00 ②14:00-17:00 ③17:00-20:00 ④ 20:00~21:00
※最終回ご参加の方は必ず20:00までに来場ください。
■トーク&サイン会:2024年8月17日(土)18日(日)
・入場券 3,000円(税込)※ 呪物書店入場券+呪物ステッカー付
・開催回ごとのチケットを販売いたします。
・サイン入れは当日お買い上げいただいた書籍もしくはグッズに限定させていただきます。
※出演者は変更になる場合があります。ご了承ください。
【トーク&サイン会 今後のスケジュール】
2024年8月17日(土)
<昼の怪>
14:30~15:30 トークショー
15:30~16:00 サイン会
登壇者:田中俊行さん
ゲスト:川奈まり子さん
※17日(土)は<昼の怪>のみ
※夜は【怪談会】の開催となります
2024年8月18日(日)
<昼の怪>
14:30~15:30 トークショー
15:30~16:00 サイン会
登壇者:田中俊行さん
ゲスト:都市ボーイズさん(怪奇ユニット)
<夜の怪>
18:30~19:30 トークショー
19:30~20:00 サイン会
登壇者:田中俊行さん
ゲスト:高田公太さん
■怪談会:2024年8月16日(金)、17日(土)
・入場券 3,000円(税込)※ 呪物書店入場券+呪物ステッカー付
・開催回ごとのチケットを販売いたします。
・サイン入れは当日お買い上げいただいた書籍もしくはグッズに限定させていただきます。
※出演者は変更になる場合があります。ご了承ください。
【怪談会 スケジュール】
2024年8月16日(金)
18:30~20:30 怪談会
20:30~21:00 サイン会
登壇者:田中俊行さん
ゲスト:村上ロックさん(怪談師)、チビル松村さん(怪談師)
2024年8月17日(土)
18:30~20:30 怪談会
20:30~21:00 サイン会
登壇者:田中俊行さん
ゲスト:夜馬裕さん(怪談師)

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「呪物書店」田中俊行氏秘蔵のコレクション展示&怪談イベント開催

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